「質」と聞くと、私たちの多くは高級な物や洗練されたデザインを思い浮かべるかもしれません。
しかし、質とはそれだけでは捉えきることはできません。
それは、物理的な特徴や表面的な良さは表層に過ぎず、
実際にはその背後にある深い関係性と相互作用によって形成されるものだからです。
質が「良い」と感じられる瞬間、それは私たちの五感が相互に影響しあう中で生まれます。
例えば、美味しい料理を食べるとき、その料理が視覚的に美しいだけでなく、香り、味、触感が絶妙に調和していることで、
初めて「質が高い」と感じることができます。この感覚は、単純な物理的ないしは視覚的な特性に限ったものではなく、
私たちとその料理との関係性、すなわち相互作用の中で引き出されているのです。
その上で、質の本質を考えるとき、私たちが気づくのは、
質とは決して一方向的なものではなく、相互作用の中で育まれるということです。
人とモノ、人と人、そして人と環境との関係性が、互いに影響を与え合い、質を作り上げていきます。
この相互作用こそが質を生み出し、私たちの五感に深く響くのです。
質の多面的な特性は、日常的な状況にも現れます。
たとえば、チーム編成を考えたとき、何らかの条件で「優秀」と定義した人材を集めることが最良の解決策だと思われがちですが、
実際には必ずしもそうではありません。意外な組み合わせのチームが、予想外に高度な内容を達成することがあります。
それは、メンバー同士の深い部分での相互作用が働き、そこから想定以上の価値や成果が生まれているためです。
そして、このような質の本質的な特徴そのものが、現在は予測不可能な時代として表れているのではないでしょうか。
予測可能な時代を過ごしてきた私たちからすれば、予測不可能な時代と聞くと恐怖を感じるところもあるかもしれません。
しかし見方を変えれば、質の持つ本来の特徴そのものが現代の不確実性そのものであり、最終的にこれこそが本来の自然の姿ともいえるのです。
このように考えると、現代は質という観点における最適化に向けて、
テクノロジーも内包される形で自然な世界への回帰が進んでいるといえます。
質とは関係性であり、相互作用であり、自然の在り方そのものであること。
そして個人においては、五感を通じて感じ取る、動的で深遠な力でもあること。
質。実に面白い存在ですね。