Our Column

映像と数学

視覚構造に宿るシステムデザイン

 2025/04/04 wrote

ZENSINでは、映像を「感じられる構造体」として見ています。視覚・聴覚・リズム・空間、そのすべてが“構造”という視点で設計されていて、そこにこそ、数学的な思考が生きてくるんです。

とはいえ、映像は論理だけでできているわけでもありません。ですが、論理という骨組みがあるからこそ、そこに感性や偶然性、詩的な響きといった“生きた要素”を流し込めるんですよね。だからZENSINでは、論理と感性を一体として映像を作っていくスタイルを大切にしています。

今回のコラムでは、映像の中に潜んでいる数理構造をいくつか紹介しながら、「映像って論理でできてるんだな、でもそれだけじゃないんだな」という感覚を共有できたらと思っています。特に、企業や研究機関の方にとって、映像がどれくらい“設計可能な構造物”なのかを知ってもらえると、意思決定の現場でもっと映像という手段が活きてくると思います。

組合せ最適化:すべて見せる必要はない

例えば、アクション映画で10人の敵を倒すシーン。全員を1カットずつ倒す映像を見せられたら、正直ちょっと飽きてきますよね。ここで使えるのが「組合せ最適化」っていう考え方です。

1.撃つカットはひとつだけ。
2.倒れる敵は3パターンくらい用意して、
3.撃つ → 倒れる1 → 倒れる2 → 倒れる3 → 静寂。

これで十分、というかむしろ印象が強くなる。観ている側の脳が自然に“補完”してくれるから、結果として豊かに感じるんですよ。
注:組合せ最適化とは、与えられた要素の中から、目的に一番合った組み合わせを選ぶ数学的な考え方です。

位相空間:ジャンプカットがつながって見える理由

映像では、突然場面が飛ぶことがあります。でも、不思議と違和感がないとき、ありますよね?それは「位相的な連続性」が保たれてるからなんです。

1.カメラの向きが変わってない
2.主人公の動きがつながってる
3.音が途切れていない

このあたりが守られていれば、空間が飛んでも脳が自然と“つながり”を感じてくれるんです。
注:位相(トポロジー)とは、形を変えても本質が変わらない“空間の性質”を扱う数学の分野です。

フラクタル構造:同じリズムがスケールを超えて繰り返される

ZENSINの映像では、「入れ子構造」ってよく使います。これはいわゆるフラクタルに近い考え方です。

1.全体の物語構造(たとえば戦争)
2.中間単位(部隊の動き)
3.小さな単位(個人の感情や表情)

それぞれが“似たリズム”を持っていて、結果として全体の統一感が出てくる。これって、数学的には「自己相似性」って言われてるやつですね。
注:フラクタル構造とは、どこを拡大しても同じような形が繰り返される構造のことです。

情報圧縮とエントロピー:全て見せると退屈に

良い映像って、ちょっと“余白”があるんですよね。全部説明しないで、観る人に想像させる。

1.見せすぎるとノイズになる。
2.見せなさすぎると意味が伝わらない。
3.ちょうどいい“乱雑さ”が、観る側の想像力を引き出してくれる。
注:エントロピー(情報理論)とは、情報の「不確実性」や「ばらつき」を示す概念です。

さらに、「Kolmogorov複雑性(コルモゴロフふくざつせい)」っていう考え方があって、最小の説明で最大の意味を出す、という設計もできるんです。
注:Kolmogorov複雑性とは、ある情報がどれくらい短いプログラムで再現できるか、という“情報の圧縮可能性”を示す尺度です。
ZENSINの映像では、「短くて豊か」をこの視点からしっかり設計してます。

ピタゴラスの定理:直角から生まれる感情の合成

誰もが知ってる、あの公式。

a² + b² = c²

これって、映像的にもめちゃくちゃ深いんですよ。

たとえば:

a:視覚的な動きや情報(見る)
b:音楽や効果音(聴く)
c:感情的インパクト(感じる)

この3つが直交していると、感情が一気に“合成”されて強く届く。単なる足し算じゃなくて、直角のエネルギーが斜辺に集まってるイメージですね。この構造って、記号的な意味にも応用できます。

1.主人公の行動(a)
2.背景に飛行機雲が流れている(b)
3.→ 「別れ」や「時の流れ」といった“意味”(c)が自然と浮かんでくる。

ピタゴラスの定理って、「違う方向の要素を掛け合わせたとき、新しい意味が生まれる構造」なんですよね。

映像って、知の触媒なんです

映像って、感覚を刺激するだけじゃない。その奥には、構造があります。でも、その構造が“感性を入れ込む器”でもあるんですよね。数理的な設計があることで、詩的なモチーフや、説明しきれないニュアンスも生きてきます。

ZENSINが目指してるのは、映像を「知的プロトコル」として社会と接続すること。そのためには、構造的に映像を読み取ってくれるパートナーやクライアントと一緒にやっていきたいんです。映像って、感情を動かす装置でありながら、実は“思考”そのもの。そして、感性と論理の循環によって、美しさを立ち上げていく手段でもあるんです。

付録:ZENSINが映像設計で使っている構造(抜粋)

■ 組合せ最適化 → カット構成の最小設計。少ないパターンでも豊かな印象を残す。
■ 位相空間(トポロジー) → ジャンプカットがつながって見える。視覚的・聴覚的な“連続性”を設計する。
■ フラクタル構造 → ストーリーや演出をスケールごとに反復・変奏。統一感と深みを生む。
■ 情報圧縮とエントロピー → あえて余白を残す設計。観る側の想像力で意味が“増幅”するように設計。
■ Kolmogorov複雑性 → 「短くて深い」を狙う設計。情報を圧縮しつつ、最大の意味を伝える。
■ ピタゴラスの定理 → 異なる要素(視覚×音×意味)を直交させて、感情や象徴を合成する。

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