Our Column

学習の果てにある無意識

“忘れる”というプロセスまで含めて、学びは完成する

2025/05/21 wrote

私たちは、日々多くを学び、蓄積し、それらを活用しようとします。
しかし、どれほど知識を詰め込んでも、実際の現場ではうまくいかないことがあります。
あるいは、理論どおりに動こうとして、かえって動きが鈍くなってしまうこともあります。

このコラムでは、学習というプロセスの「その先」にあるもの──
棄却=一度、すべてを手放すことでしか得られない“理解”の質について掘り下げていきます。

■ 「考えて動く」では、間に合わない

たとえば、格闘技の試合に出るとします。
構え、間合い、カウンター──技術や理論は頭に入っている状態です。
ですが、いざ対峙すれば、相手は待ってくれません。
考えてから動こうとすると、その瞬間に隙が生まれてしまいます。

「考えているうちは遅い」──この感覚は、格闘技に限らず、あらゆる実践に共通しています。
知識は、表層で「操作」しようとするほど、動きの自由を奪ってしまうことがあるのです。
頭で保持するのではなく、知識が沈んで、身体の奥で“自然に反応する”ようになってはじめて、自在な動きが現れます。

■これから「忘れることに成功する」までが、学び

自分自身の経験でも、そのことを強く実感しています。
ゲームの世界で世界ランカーになったとき、最速記録を狙おうとすればするほど、タイムは伸び悩みました。
攻略ルートや操作を頭でなぞろうとすると、どこかに“引っかかり”が出てしまいます。判断がワンテンポ遅れるのです。

ところが、無心でプレイしているときには、驚くほどスムーズに手が動きます。
自分の意思とは別に、身体のほうが勝手に最短ルートを選び、障害物を回避し、操作を完了してくれるのです。
思考が、あとから追いかけてきます。

そのとき、「ああ、自分はもう、全部を理解してるんだな」と気づきます。
理解とは、思い出さなくても“できてしまう”という状態のことかもしれません。

■ 「忘れる」が起こると、知識は静かに統合されます

学びは、「知る → 実行する」という直線的な流れではありません。
「知る」ことで得たものが、自分の中で静かに沈み、
意図的に取り出そうとするのではなく、必要なときに勝手に浮かび上がってくるような、
そんな循環の中でこそ、本当の理解が形になっていきます。

一度棄却された知識は、消えるのではなく、統合されていきます。
格闘技でも、音楽でも、演技でも、プレゼンでも──
「何も考えていないのに、自然に出てくる」瞬間には、すべての経験が静かに支えてくれています。

■すべての方法論が“ひとつ”になる瞬間があります

精神統一という言葉があります。
それは、雑念を消すことではなく、あらゆる思考が深層で結びつき、溶け合っている状態のことともいえるかもしれません。

格闘の場でも、制作の場でも、あるいは対話の最中でさえも、
複数のアプローチや理論が“矛盾しないまま共存する”という不思議な感覚があります。
これは、思考の整理ではなく、感覚としての統合です。

学びが沈み、選択肢ではなく「状態」として存在するようになったとき、
人は、方法論そのものになっているのです。

■ 情報もまた、沈み・溶け・現れます

ZENSINが制作する映像や広告においても、同じ構造を意識しています。
ただ情報を届けるのではなく、それがどの帯域に触れ、どの層で反応を引き起こすかということ。

ときに、身体が先に反応するような「直観的な構成」。
ときに、感情が自然に込み上げるような「共鳴的な設計」。
あるいは、言語化される前に“腑に落ちる”という深い納得。

それらはすべて、表層で操作される情報ではなく、深層で再構成される情報を志向しています。

■ 「使う」のではなく、「なる」ために

学習とは、ただ覚えることでも、正しく再現することでもありません。
それが自然に動きになり、言葉になり、選択になっているとき、
人は知識を“使っている”のではなく、“なっている”のです。

忘れてしまったようで、実は一番深くに沈んでいるもの。
そのような学びが、最も強く、静かに、人の本質を支えてくれます。

だからこそ、学習とは「棄却」まで含めたプロセスであり、
理解とは、記憶の保持ではなく、「もう思い出す必要がない」というところにこそ、現れてくるのだと思われます。

Contact Us

真に価値ある映像を
一緒につくりましょう!

私たちは“価値ある映像”を追求し続けています。
綺麗な映像、テンポが良い映像、分かりやすい映像。
これらは技術をあてはめるだけでも作ることができます。
一方、私たちが信じる“価値ある映像”とは、
感性と論理が高度に調和したものだと考えます。
これらの調和を目指して、価値を描出するのがZENSINです。
しかしこれは 、ZENSINだけでは絶対に生み出すことはできません。
クライアント含め、関わってくださるメンバー全員が信頼しあい
協力し合うことで 、はじめて達成することができます。
価値ある映像で世の中を満たしたい!
そんな世界をみんなで作り上げていきましょう!

  • Follow us
  • twitter | ゼンシン合同会社
  • facebook | ゼンシン合同会社
  • youtube | ゼンシン合同会社
ゼンシン合同会社
 

© ZENSIN LLC All rights reserved.