
伝わる映像と、分かる映像──体験と道具、その還流のなかで
2025/04/17 wrote
映像には、大きく分けて二つの系統があります。
ひとつは「分かる映像」、もうひとつは「伝わる映像」。
この二つは、似ているようで、本質的な立ち位置が異なるのです。
■「分かる映像」──道具としての完成形
たとえば、商品説明の動画、使い方を簡潔にまとめたハウツー動画など。こうした映像は「分かること」に特化して設計されています。
必要な情報を必要な順に、誤解のないよう整理して提示する。その映像は、情報を扱う“道具”として非常に洗練されているのです。むしろこのような映像は、品質を「道具性」で定義するならば、すでに完成されているといえるでしょう。
現代社会では、このタイプの映像があらゆる場面で活躍しています。そして、それは今後も必要不可欠な存在であり続けるはずです。
■「伝わる映像」──体験を生むメディア
一方で、「伝わる映像」とはなんでしょうか。
これは情報の正しさを伝えるというよりも、“共に感じ、共に生きる”感覚をつくる映像です。
企業の理念や、文化、誠意や哲学。目には見えにくく、言葉にしきれない“想い”を、体験として共有することを目的にした映像なのです。
こうした映像は、視聴者をただの受け手ではなく、企業やブランドの“共創者”や“仲間”へと変えていく力を持っています。
■ 理念に「共鳴する」という現象
かつて映像によるコミュニケーションがまだ主流ではなかった時代では、ある若者が、企業理念に心を動かされて入社を希望した。ところが、そのことを企業側はにわかに信じることができなかったのです。
なぜなら、当時は理念に共鳴するとは、一定の人生経験を経た者だけができることという認識があったからです。つまり、共鳴=経験の帰結と考えられていました。
しかし、映像がコミュニケーションの主流となった現代は、そうとは限りません。映像には、体験を媒介する力があるのです。理念をただの言葉ではなく、映像として立体的に提示することで、視聴者はまだ体験していない価値観にすら“リアルな感情”としてアクセスできるようになります。
このことは、採用の現場において決定的な変化をもたらしました。共鳴とは、共感とは、人生の蓄積だけではなく、良質な映像体験の中でも発現する。それによって、企業は潜在的な価値観を持つ人材との出会いが可能になったのです。
■ 道具と体験のちがい
-
映像のタイプ:
分かる映像(=道具)/伝わる映像(=体験) -
主な目的:
正しく知る/感情的に共鳴する -
特徴:
明快さ、簡潔さ、即効性/余白、共鳴、記憶への定着 -
評価軸:
理解・機能性・時間効率/共感・没入・関係性の変化 -
視聴者の立場:
情報を得る人/物語に参加する人
■広告はいま、還流の時代へ
この二つの映像は、対立するものではありません。むしろ、今の広告においては──「体験としての映像」と「道具としての映像」が還流するような設計こそが求められているのです。
たとえば、理念映像の中に自然にプロダクトの説明が組み込まれたり、逆に、商品の説明をしているうちにブランド哲学が染み込んでくるような構造があったりする。
つまり、伝わることで分かり、分かることでまた伝わるという循環です。広告は、情報を届けるものではなく、“意味”を発酵させる媒体へと進化しようとしています。
■ 体験の核心に迫る難しさ、そしてZENSINという存在
しかしながら、この「伝わる映像」を実現するのは容易ではありません。共感までなら、ある程度の演出や構成でデザインすることは可能でしょう。
ですが、企業の本質的な理念や姿勢、哲学まで体験として伝えるとなると、一気に難易度は跳ね上がります。なぜならそれは、情報ではなく信念を翻訳する作業だからです。
視覚、音、間、沈黙、余白、そして人の表情──それらすべてを丁寧に織り上げて、受け手の「身体」にまで届く映像をつくるには、その企業と深く共鳴し、思想を共有できる制作側の存在が必要なのです。私たちZENSINは、まさにそのために存在しています。
理念を、目に見える形で。
想いを、声の届く距離で。
企業がなぜ存在するのか、その問いに真っ向から向き合い、
それを映像という“体験”へと変換していくための専門家なのです。
伝えるのではなく、伝わること。
理解させるのではなく、共に感じてもらうこと。
そして、道具としても完成された情報が、本質の体験として人に息づいていくこと。
それが、これからの広告の姿だと、私たちは信じているのです。
なお、今回のコラムでは「体験と道具の還流」に焦点を当てましたが、広告設計においてもう一つ重要な観点があります。それは、“直観に向けたデザイン”です。
情報処理を通さず、身体ごと理解するような知覚デザインの力。このテーマについては、あらためて別のコラムで掘り下げていく予定です。お楽しみに。
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